CIO LoungeMAGAZINE_2023autumn
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ごとの電力消費量は縦棒で表しています。これを見た課長が0時過ぎに動いている補給ラインは1つだけなのに何故こんなに電気を使っているのだろうと気が付きました。私は常々デジタルで問題を見つけたら現場に行けと言っていますが、現場に行くと、37kWというバカでかいエアコンプレッサーが2台、ずっと動いていたのです。夜中にこんなの要らないということで、1.5kW1台に置き換えた。これだけで2.7%、年260万円ぐらいの削減効果です。ある企業から相談があったのですが、ベンダーのシステムを2〜3億円かけて工場設備を見える化したが、全くコスト削減できないというのです。結局、皆気が付いていなくて、私も知らなかったのですが、実は待機電力が非常に大きいのです。一般家庭は5%程度ですが、当社のマシニングセンターは加工しているとき2.45kW、でも加工が終わって扉が開いて口を開けて待っているときも1.6kWなのです。そうすると、昼休みとかに電源を入れっぱなしで休憩に入ると1.6kWが垂れ流しです。そういうのを止めるのです。当社では加工に使っている電力を〝正味電力〟と定義していますが、これはある程度仕方ないのです。停止電力と言っているのは生産したいけど、何らかのトラブルで止まっている場合、待機電力は昼休みや夜中に作るつもりもないのに電源が入りっぱなしになっている場合です。そういったムダな部分を調べる方法ですが、電力計を付けるのではなく、稼働データを入れると電力量が計算できるようにしました。そして実測に合わせてモデルを修正します。一度この関数を求めると電力計は不要です。実際にやってみるとほぼぴったりで、実に1%程度の誤差しかありませんでした。高精度もいいですが、それより大事なことはムダが見えることです。現場の人たちは蛍光灯を消して省エネした気になって、待機電力を意識していなかったんです。しかし特に何もしなくても、消すだけでズバッとなくなった。結果1か月分のデータを見ると6割下がっていました。このラインが特殊な例かと思ったら、こんなのがたくさんあったのですね。このブレーカーを落とす。アナログですが、すごくわかりやすい。ちなみに電力計は今半導体不足で買えません。1年待ちです。当社の場合、もし全部付けたら2000台ぐらい必要ですので大変なコストになります。一方で、よく聞かれるのですけれども、切らない設備もありますねと。それはその通りですが、切れない設備があるから一律に切らないとなってしまっているのです。切れるものだけ切ればいい。ご飯に行くときはこれ押してからいく、帰るときはこれをパンパンと切って帰る。これだけで全然違うのです。あと、iXacsの画面に「あんどん表示」というのがありますが、計画停止や電源のオンオフの状況がよくわかります。こうやって見える化すると、現場は直そうとします。ちゃんと切ろうと思う。電源を切るだけ、少しの手間でお金は全くかからないわけです。ここに旭鉄工電力低減状況とありますが、横軸は月間の売上で、縦軸は電力分のCO₂排出量です。同じ売上高だったら下に来るほうがいいのです。私が来た2013年は赤のプロット、これは省エネという意識で8年間カイゼンしまくって、結構下がりました。しかし21年度が終わったときに、電力の見える化をやったら、また同じくらい下がっているのです。これで13年とを考えると、約1.5億円ですので、もの凄い効果です。これが問題を見える化し実行した成果です。電力の話だけではなく、労務費なども大きく下がっていて、収益体質自体が全く変わってきています。それらの結果、損益分岐点が29億円も下がりました。もちろんすぐに効果が出るわけではありませんが、トライしなければ効果は絶対得られません。矢島 してものすごく抵抗感を持っている。自分は技術に弱い、テクノロジーはわからないという人が非常に多い。その点、欧米は総じてテクノロジーが好きですね。例えば日本の経営者で、財務指標を読めないと自分で言う人はいません。ところがITやテクノロジーについては平気で苦手だと言います。木村社長 る化で、こんなに待機電力がありますよという話をいろいろな社長にしたのですが、感心してくれたのはトヨタの内山田前会長とアイシンの■田社長、ダイハツの奥平社長の3人で、皆さん、凄く面白いと言ってくれました。響くのはやはり技術系の社長ですかね。「DXに必要なのはIT人材ではない」木村社長 考えています。今はパッケージやサービスがたくさんあるので何とかなるものです。当社でも、私以外にIT人材は1人しかいませんが、その彼も機械学習とかを自分で調べて勉強してやっています。要は持っている知識ではなく、やろうという意欲です。さらに大事なのは、さっきのChatGPTについても、こんなのができるんじゃないかと言ったら、何とかプロンプトを書いてきました。そういう感覚を持たなければいけないし、何よりもトライしなければだめなんです。木村社長 場の事例をお話したいと思います。これは凄い成果だと思っています。自動車部品産業はすでに国内市場は伸びませんので、こういうことをやらなければいけないという、まさにお手本です。これはタイ工場の12月8日の午前7時から翌朝までのデータです。明らかにここが昼休み、これが昼勤話していて感じるのは、日本の経営者はITや技術に対それはあるかもしれないですね。さっきのCO₂の見え従来から、DXに必要なのはIT人材ではないと最後に当社のタイ工タイ低減事例旭鉄工電力低減状況工場マネジメントによる削減例623年を比べると26%。年間の電力消費量が6億円ということTetsuya Kimura Takao Yajima

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