CIO LoungeMAGAZINE_2025autumn
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で「最高」のものを目指すのです。世界では、やはりワインが仮想敵となります。ワインは熟成やブドウの産地など、西洋文明の中できっちり作り上げられてきたものです。そうしたものにぶつかっていこうとすると、やはり日本的な手間をかけることで戦っていくしかありません。最後に、私の信念ですが、経営者というのは何かにすがらないと生きていけないと思います。何か支えになる考え方や信念ですが、それは私にとっては「社会貢献」なのです。すなわち、旭酒造は、存在することによって社会に何かいいことがなければ生き残っていけないということです。それこそが旭酒造にとって、よって立つ基盤なのです。「世界デジタル競争力ランキング」で日本が毎年順位を落としている現状をみると、日本企業の縦割り組織や過去の成功体験にしがみつく体質が続く限り世界に勝てないのではないかと感じてしまいます。舟竹会長が日本長期信用銀行の破綻を経験されたのち、セブン銀行の設立に関わった経緯を伺うなかで、経営のみならず、金融やITについても多くの示唆をいただくことができました。セブン銀行設立当時、様々なバックグラウンドの人が集まった結果、逆にコミュニケーションに苦労されましたが、どのように乗り越えてこられたのか。26、000台のATMビジネが何故成り立つのかなど、顧客視点で考えることの重要性を改めて認識しました。大学卒業後、日本長期信用銀行に入行し、1998年の破綻・国有化を経て、セブン銀行設立プロジェクトに参画しました。当時、鈴木会長は「お客様視点」のもと、金融の素人やIT人材など集め、「100人プロジェクト」を立ち上げました。本当に先見の明があったと思います。100人プロジェクトでは、古い考えに染まったベテランではなく、今までとは異なる発想でお客様のことを考えられる人たちを集めたのです。当初、小売出身者、転職組、銀行からの出向者をそれぞれ3分の1ずつとしましたが、使う言葉や考え方が異なりコミュニケーションには本当に苦労しました。さてセブン銀行ですが、当時、鈴木会長は「銀行を作ろうと思ってこの銀行を作ったわけではない。コンビニでお金をおろしたいというお客様のニーズがあるからだ」と言われ、また「24時間・365日インターネットが動いているのに、なぜ銀行は3時に閉めるのか」という素朴な疑問から、ATMのコンビニ展開を進めたのです。コンビニにATMを置くことについては、お客様の思いに応える最善の方法を考えた結果、セブン銀行を作ったのです。セブン銀行のATMは「品切れを絶対に起こさない・絶対に止まらない」という考え方で設計しており、全国26、000台のATMが常に集中監視され、障害時にはリモートで復旧できるシステムを構築しました。またお客様視点で考えた結果、「カードは取り込まず必ず排出する・停電時でも止めないためバッテリーを内蔵する」なども実現しました。一方で、コンビニで有料のATMによる収益確保は困難ではないかと言われましたが、お客様のATM利用手数料を銀行からいただくことで年間約千億円の手数料収入が計上できています。さらに行政や金融機関の窓口機能が縮小する中、コンビニATMがその機能を担う可能性を模索し、マイナンバーカードによる手続きや住所変更などもATMで可能になりました。金融機関や行政との垣根はどんどんなくなっています。要は、お客様が「あったらいいな」と思うものは何かということを問い続けていくのです。最後に、ESG経営やSDGsについてですが、セブン銀行が進めている5つのマテリアリティがあります。1つめは、先ほど申し上げた「ATM事業」、2つめは「新たな金融サービスによる生活創造」、3つめは「多文化共生」です。これは母国への海外送金など外国人の方々の利便性向上への取り組みです。そして4つめは「誰もが活躍できる社会づくり」、そして最後は「環境負荷の軽減」です。CO²排出量削減に加え、我々ならではの取り組みとしてATMの省電力化や100%リサイクルなどを進めています。今後とも、私たちは小さくてもいいから、困っている人たちにきめ細かいご支援を提供し、そしてそれ自体がビジネスになるということをしっかり進めていきたいと思います。木村社長とは5年ほど前にお会いしましたが、「昭和の 第3号テーマ『銀行の進化:お客さまが銀行に求めるモノ』銀行の常識を覆す「顧客視点」の経営、ATM事業の確立、そして社会課題解決への挑戦矢島理事長セブン銀行舟竹会長が語る株式会社セブン銀行舟竹泰昭会長第4号旭鉄工木村哲也社長テーマ『DXはD(デジタル)ではなく、X(トランスフォーメーション)』「昭和の機械にIoT」という発想に基づく低コストでの現場改善、データドリブン経営、そして経営者のDX推進における役割矢島理事長理事長対談からの学び10

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