位前後、何とかトップ5を目指した結果は6位でした。電電公社でコンピューター事業を始めた理由は、コンピューター通信は、第1の電報・電信、第2の電話に次ぐ第3の位置づけで、その中で私たちのミッションは、〝日本のコンピューター産業の育成〟と〝国民生活を豊かにする〟という2つでした。そもそも公社のミッションは民間と戦うことではなく、公共的な観点、いわば社会正義のような気持ちでやっていました。 公社が目指したのは「コンピューターユーティリティー」、すなわち水道や電気のようにコンピューターリソースを使えるようにする、まさに松下幸之助翁の「水道哲学」だったのです。グローバル化について、アメリカの会社を買収して思ったことがあります。当時日本はリーマンショックで、CIOの人たちは大変だと言っていましたが、アメリカは元気で、今仕事しなければいつやるのかと言っていました。アメリカは不景気になると、IT投資に力を入れます。工場も休んでいますので、この機会にシステムを入れ替えて人を減らすといった大胆なことをやります。日本は、逆に社内失業が増えるだけで、IT投資をしても人が減らない。アメリカと日本ではものの考え方が全く逆なのです。これから日本は、人口減少が進んで、人が雇えない時代になってきます。そういう意味で、日本はこれからの20年がチャンスなのです。アメリカは外科手術ですが、日本は漢方処方でようやく効いてきました。すでに終身雇用ではなく、人の流動化も進んでいます。人が少なくなるとITで賄うしかないのです。最後に技術経営士の会ですが、10年位前にできた組織で、私は三代目の会長です。これまで理工系出身者は研究開発や技術者が当たりまえでしたが、ここ何十年かで技術系の経営者も出てきました。これからは技術のことがわからないと経営自体ができないと思います。小林武彦先生の「生物はなぜ死ぬのか」という本に、人間だけがなぜ長生きなのかについて非常に興味深いことを書いておられます。老後の存在理由は、高齢者がいろいろな知恵を若い人たちに伝承していく、その伝承する高齢者がいる種族が生き延びるのだというものです。だから高齢者が持っているノウハウを次の世代に伝えていく、これこそが人間が長い老後を得た最大の理由なのです。技術経営士の会では、技術を理解し、かつ経営に携わった人たちが集い、そういった支援をしていきたいと考えています。森島さんは、セレッソ大阪で日本代表やエースストライカー、さらにはアンバサダーとして大いに活躍されてこられました。対談では森島さんのこれまでの経歴や考え方などに加えて、サッカー界の人材育成の現状と課題等についても貴重なお話を伺いました。IT界でも人材育成は最重要課題であり、自社のみならず業界としてもトップクラスの人材を育てることが重要になってきていると思います。セレッソ大阪のクラブ名の「CEREZO(桜)」は、大阪の市花であり、日本を代表する花でもあることから、「地域に根ざし、ここ大阪から日本を代表するクラブへ、そして世界で満開の夢を咲かせるクラブへ」という思いが込められています。私自身は高校卒業後、1991年にヤンマーに入社しましたが、当時はサッカー界がプロ化に向けた準備を進めていた時代でした。Jリーグというプロリーグができたことは日本のサッカー界にとって非常に大きかったと思います。今ではワールドカップには必ず出るという感じですが、セレッソは当初から「育成型クラブ」に力を入れており、アカデミー出身選手がトップチームで活躍し、世界に羽ばたいている選手も多くいます。何故セレッソからトップチームにいい選手を出すのかという声もありますが、セレッソではアカデミー選手も海外遠征に積極的に派遣しています。若くして海外に触れることで、アカデミーの選手もそこにつながっていきたいという思いが強くなります。また外に出るからこそ、アカデミーでしっかり人材を育てることがクラブにとって重要になるのです。アカデミーで活躍した選手は、クラブへの思いと自分たちのクラブが何を大事にしているかを、常に意識しながら経験を積んでいきます。そういった選手が、いずれ海外チームに移籍すると、次の選手が出てくるという好循環がとても大事なのです。次にJリーグの課題ですが、若い選手を、Jリーグ全体でいかに育てていくかということです。そのためには、Jリーグ自体が自らの価値を上げていくことが必要です。最後に、日本サッカーにおけるデータ活用ですが、近年様々な形でデータを活用しています。私たちが若い頃は、気合で何周走るとかでしたが、今はGPSで練習状況をリアルタイムに把握できます。昔は実際に現場を見て分析し、次の試合に向けて準備していましたが、今では映像を編集ソフトで切り取って相手の情報を分析しています。ひとつのセットプレーが勝敗を分ける可能 第7号テーマ『未来の子供達に大きな夢を与えられるそんなクラブに』プロスポーツ経営における人材育成と社会貢献、そしてIT業界との共通課題矢島理事長株式会社セレッソ大阪 森島寛晃社長セレッソ大阪、森島社長が語る理事長対談からの学び12
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