CIO LoungeMAGAZINE_2025autumn
19/28

基幹システム分科会は本年4月に発足しましたが、活動自体は未だに手探り状態で検討の深化はこれからという段階です。一方で分科会メンバーは豊富な経験を有しており、今後の成果に大きく期待できるものと思います。まだまだ初期的な検討の域を出てはいませんが、これまでに議論してきた内容の一端をご紹介します。【基幹システムの範囲】「基幹システム」という用語は、IT関係者間では日常的に使用される一般的な用語ですが、その具体的な範囲に関しては業界や企業によって多少(あるいは相当に)異なっているものと考えています。分科会として基幹システムの普遍的な定義をするわけではありませんが、検討を進める上で認識を擦り合わせる必要があることから、製造業を前提に以下のように基幹システムの対象範囲を設定しました(図①参照)。基盤業務:会計仕訳を伴う取引ならびにその直接的な前方取引(受発注や在庫受払など)を全社レベルで処理するシステム。伝統的なメインフレーム上のレガシーシステムあるいはERPのコアモジュールなどが対応してきたもの。拡張業務:基盤業務とある程度密なデータ連携は伴うが、直接的に会計仕訳へ連なるわけではない情報(需給データや技術部品表など)を処理するシステム。比較的新しいオープン系システムあるいは専門パッケージなどで対応されてきたもの。個々には、「これ基幹システムの範疇かな?」というものが多々存在しますので、あくまで議論の前提を合わせるための設定として捉えています。【基幹システム刷新の全体工程Why/What/How】マガジン9号では、基幹システム刷新の「Why」「What」「How」に悩まれている企業に何らかの有益な情報を示唆したいと考えていることをご報告しました。具体的には、基幹システム刷新の全体工程と「Why」「What」「How」を対応づけた上で(図②参照)、それぞれにどのようなTIPS(DOs&DON’T)が考えられるのかということを分科会メンバーの濃密な経験から抽出ならびに整理しようとしています。成功要因の総花的整理はプロジェクト管理論の書籍等にお任せするとして、メリハリの利いた臨場感のあるポイントを実際の経験も踏まえながら紹介していけたらと考えています。【Whyの検討内容の紹介】まだまだ初期的な議論の段階ですが、「Why」については基幹システム刷新の起点を「経営主導/部門主導」と「業務視点/IT視点」の2軸4象限で類型化し、検討を進めていこうとしています(図③参照は、そもそも誰の、どのような課題認識が契機となって、基幹システム刷新の取り組みが動き始めたかということを指しています。分科会メンバーの経験から、特に難しいのは図③の右下の象限となるIT部門の課題認識が起点となっているケースのように感じます。というのは、いかに基盤業務の持続的安定性を確保するために重要かつ必要な取り組みではあっても、単なる老朽更新名目では経営層に対しても業務部門に対しても投資納得感を得ることが難しいという現実が目の前に立ちはだかることが多く見られるからです。)。ここでいう起点と結果として、右上や左上の象限に属する業務視点や経営視点のメリットを盛り込んで起案/上申を行う必要性に迫られることが多くなりますが、ともすると経営層や業務部門のコミットメント獲得が中途半端な状態でプロジェクトが始動し、後になって十分な協力が得られずに苦労するという事態が生じます。今後、右下の象限はもちろんのこと、起点の類型毎にプロジェクトの建付け方のTIPSについて色々と深掘りしていければと考えています。「Why」の検討はまだまだこれからという段階ですが、「What」「How」についても分科会内にそれぞれの部会を設けて同時並行的に検討を始めています。検討の進度や深度などの歩調合わせや分科会成果物のイメージ固めなど、クリアしなければならない課題は残っていますが、CIOLoungeらしさを持って議論を深めていきたく思います。皆様からもご意見やご要望があればぜひお聞かせください。Subcommittee基幹システム分科会発足後4ヶ月間の経過報告s図①製造業組織とシステム機能一覧図②基幹システム刷新の全体工程とWhy/What/How製造業組織とシステム機能一覧変更履歴、 承認記録)見積/購買発注/入荷開発部門デジタルエンジニアリング(CAE,VPS等)PLM(設計図面、BOM、CADデータCRM、SFAマーケティングIT営業、マーケティング部門生産・調達部門製造現場管理需給(SCM管理)本社経営として実現したい姿が明確経営としてIT近代化に関心「Why」起点パターン図③Why起点パターン生産計画/製造指示/生産管理入庫/在庫管理/倉庫管理/出庫買掛金/一般会計/固定資産/売掛金基盤業務(ERPレガシー)業務部門として実現したい姿が明確IT部門として解決したい課題が存在部門主導題目例)・在庫削減/LT短縮 ・調達コスト管理 ・管理水準の高度化 ・業務効率/事務スピード向上etc.題目例) ・S/W,H/Wのサポート期間終了 ・保守要員の引退(内部&外部) ・容易な機能追加/データ連携の実現 ・旧世代技術からの脱却etc.CAD購買管理販売管理引合/見積/受注/出荷/売上SORSOE生産管理在庫管理財務会計経営主導題目例) ・グローバル経営/業務視点 リスク情報の可視化 ・グローバル需給/ etc.在庫管理題目例) ・AI活用 ・クラウド推進 ・サイバーセキュリティ ・2025年問題etc.IT視点分科会報告18

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る