CIO Lounge Magazine_2026winter
11/28

【3】 売上重視の決断−再成長への覚悟−【4】 需要の乱高下とSCM改革のはじまり−危機対応を後手に回さない−【5】 FittoStandardの葛藤と  「ロームらしさ」の再定義去とコロナ禍が重なった特別な年でしたね。松本氏 に転換期でした。指導してくれる存在がいない中で、自分が何を打ち出すのかが問われました。まず行ったのは「会社の目的を再確認すること」です。そこで掲げたのが、「パワーとアナログにフォーカスし、省エネと小型化で社会に貢献する」という経営ビジョンです。単なるスローガンではなく、全社員に共有することに重きを置きました。TeamsやZoomを使って数十回にわたるオンライン座談会を開き、理念を自分の言葉で伝え続けました。社員の顔が画面に並ぶ中で、一人ひとりの表情を見ながら話す。コロナ禍の制約が、逆に「対話の大切さ」を教えてくれましたね。矢島 象的でした。組織が大きく変わるとき、トップが直接語る意味は大きいですね。矢島 えですか、それとも利益重視ですか」と率直にお聞きしました。松本さんは即答で「売上を伸ばす」とおっしゃいました。松本氏況が続いていました。ITバブル崩壊や円高など環境要因もありましたが、そろそろ攻めに転じるべきだと考えました。当社は固定費が重い分、限界利益率が高い。つまり、売上が伸びれば利益も一気に伸びる構造です。創業者が築いた内製力を活かし、もう一度成長のサイクルを取り戻そうなんです。創業者が亡くなり、社内はまさ理念の共有を「双方向の対話」で進めたことが印当時、私が初めて伺った時、「売上を伸ばすお考2001年の売上ピークを長らく超えられない状す。そう覚悟を決めました。矢島 社長ご就任後すぐに、自動車市場を中心に前例のない需要変動がありましたね。松本氏 はい。まさに異常事態でした。受注が止まり、生産ラインを止めた直後に、翌週には急激に需要が戻る。ブレーキとアクセルを同時に踏まされるような状況でした。そんな中で強く感じたのは、「全体が見えない」という危うさでした。どの製品がどのお客様に直結しているのか、どこで止めるとどこに迷惑がかかるのか―即断ができない。このままでは危機対応が後手に回る。そこで始まったのが、SCM可視化プロジェクトです。矢島 ロジェクトでしたね。短期間でよくあそこまで立ち上げられたと思います。松本氏 守してきたエンジニアがいたのが強みでした。彼らに「つなぐ仕組みを作ってくれ」とお願いしました。現場の力を信じていましたから。ただ、進めていく中で明らかになったのは、部門ごとの最適化が強すぎるということです。営業は在庫を持ってでも顧客に応えたい。製造は効率を上げたいから在庫を減らしたい。経理は資産圧縮を求める。購買は原価を下げたい。みんな正しいけれど、方向が違う。そこを束ねるのが経営でした。矢島 を聞いていて、それぞれの立場がぶつかり合う中で、全体最適を模索していたのを覚えています。松本氏 化しても、企業全体では動脈硬化を起こす。だから「統合的な業務改革をするしかない」と判断しました。システムを直すだけでは足りない。業務の意識を変える改革が必要だったのです。矢島 したね。営業、購買、生産、企画、ITが一丸となった大型プもともと社内の基幹システムを自前で開発・保まさに「正義の衝突」でしたね。私も会議で議論そうでした。結局、各部門が自分の論理で最適その途中で、基幹システムの刷新が議題になりま10Isao Matsumoto Takao Yajima

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る