2023年9月26日開催 DX人材育成分科会イベント
【DX人財育成についての各社の課題や悩みを共有する】

Ⅰ.はじめに

当分科会は今年の2月からCIO Loungeの分科会活動のひとつとしてアドバイザーも含めた正会員6名で活動を開始し、11月で第10回を迎えました。6名中3名が現役のCIOに準ずる方々ですので、毎回、リアリティのある情報を共有しながら分科会の議論を進めてきました。

分科会の最終ゴール設定としては➀IT部門と経営トップ、現場それぞれの育成方針と責任を明確にすること。②ビジネスイノベーション(攻めのDX)とプロセスイノベーション(守りのDX)を推進するにあたって人財育成の方針や方策を明確にすること。の2点を設定しました。

次にいきなり人財育成の議論には入らずに、そもそもDXを何のために何を目指して実施するのかというそもそも論の話をして議論がブレないようにしました。その結果、DXの目的は、業務プロセスの変革だけで無く、ビジネスモデルを強化・変革することで企業を永続的に成長させること。に決定しました。

DXの目標は①売上・利益の拡大②新製品・サービスの継続的な提供③顧客満足度(CS)・顧客体験(CX)の向上。の3つとしました。

また、DXはあくまでもビジネスにイノベーションを起こすための一つの手段に過ぎないので、自社のビジネスを熟知したうえでデジタルも詳しい人財の育成が重要であることも改めて確認をしました。

その後の議論では各社が取り組んだ具体的な事例を紹介しながら、どうすれば成功するDX推進組織と人財育成が可能なのか。逆にどんなことをしてしまったら失敗するDX推進組織と人財育成をしてしまうのかをかなり具体的に突っ込んだ議論をしました。それを纏めたのが以下の図です。

                 【図:成功する組織・人財育成/失敗する組織・人財育成】

ここまでの分科会での議論を受けて、9月26日(火)に1回目のワークショップを開催することが出来ました。
以降はワークショップの具体的な内容についてご紹介します。

Ⅱ.ワークショップの内容について
~DX人財育成についての各社の課題や悩みを共有する~

1.ワークショップ開催のねらい

人財育成については各社の課題や悩みは幅が広いことが予想されること、また今回は第1回目であることを鑑みて特に明確なテーマは定めずに幅広く情報共有と議論をしていただくことにしました。

ユーザー企業参加者とサポート会員参加者の方々には以下のような内容を本ワークショップでお持ち帰りいただければと考え実施しました。

ユーザー企業参加者:各社が抱える課題や悩み事を共有し、他社の成功事例や失敗事例を知ることで明日からのDX人財育成の参考にしていただく。また、サポート会員参加者からのサービス内容等の情報も参考にしていただく。

サポート会員参加者:様々な業界のユーザー企業の人財育成に関する共通の課題や悩み、逆に業界によって異なる課題や悩みを知っていただくことで、今後のサービス等の開発の参考にしていただく。

そのため、各社から事前のアンケートも頂戴して幅広く多くの課題を提示いただきました。

その全てを紹介することは出来ませんが、各社の主たる課題を纏めると以下の4つとなりました。

①人財像(スキル、期待値、評価基準)/育成方針②人財リソース確保(新卒 or 中途、内部 or 外部、現場 or情システム)③担当部署と役割(人事/情システム/経営企画)④教育方法(経営陣/全社員・選抜/遠隔・対面/内製・外注/OJT・OffJT)

ワークショップ当日はユーザー企業から11社/17名、サポート会員から9社/14名と多くの方々に参加いただきました。また、ユーザー企業は製造業(電機、食品、情報、化学、住宅等)やインフラ(電力、鉄道)、出版等の幅広い業界・業種から参加いただき狙い通りの開催が出来たと思います。

2.基調講演(関西電力:上田様)

グループディスカッションに先だって、関西電力 IT戦略室 IT企画部長の上田様から「関西電力のDX推進の取組について」とのテーマで基調講演をしていただきました。

内容としては、DXによる「生産性向上」および「価値創出」の取組により中期経営計画を実現する。そのための大きな柱としてのDX人財育成の具体策をお話いただきました。

全社的にはDX戦略委員会を立ち上げて各部門とコンサルティング企業と共同で設立したデジタル専門会社が技術支援をするという三位一体となった推進体制が有効に機能されています。その結果、わずか4年間で500件超のPoC、400件近い実用化がされており実行性が高いものとなっています。

DX人財育成については企業ミッションから組織風土に至るタテの一貫性と組織・人財・人事制度に流れるヨコの整合性が実現されておりスジが通った取組が出来ています。また、育成対象については高度DX人財/各部門のDX推進者/全社員と漏れなくカバーされています。人財戦略としては全社員向けのDXリテラシー、採用から報酬に至る人事制度、更に行動様式や心理的安全性にまで網羅されています。

以上のようになかなか真似が出来る取組ではありませんが、お手本/教師としては非常に得るものが多い講演内容でした。

3.グループディスカッション

関西電力の上田様の講演で多くの示唆を得た参加者がユーザー企業、サポート会員混合で4班に分かれてグループディスカッションをしていただきました。前述の通り、特にテーマは定めずに各社が抱えている課題や悩みを自己紹介と共に発表し、それに対して質問や意見を言うスタイルで大いに議論が盛り上がりました。関西電力の上田様にもディスカッションに参加いただきましたので、その班ではもっぱら関西電力の取組についての更に突っ込んだ質問が多く出されました。

ディスカッション終了後に各班から簡単な共有がありましたが、各班からは、分野の異なる企業間でのディスカッションで新たな知見を得ることが出来た。分野が異なっても各社の課題は意外と共通のものが多く参考になった。自社だけで考えてもなかなか新たな発想が出来なかったが先進的な取組事例を聞くことが出来、また議論をする中で色んな気付きがあって有意義であった。等のコメントがありました。

4.次回以降のワークショップに向けて

全体的には参加者の皆さまにとって有意義なワークショップではありましたが、実施後アンケートからは、グループディスカッションで少し時間が余った。ディスカッションのテーマを明確にして成果と目的を示して欲しい。というご指摘もあり、次回開催に向けて改善点も見えてきました。

このご指摘はワークショップやグループディスカッション全体を通じたテーマを明確にしなかったためであると思われます。運営側としては第1回のワークショップだったのでテーマは決めずに進めましたが。第2回目以降は以下のテーマを取り上げてワークショップ実施すべく分科会で検討しています。

テーマ案1:DX人材レベル別の育成方法

・人財レベルは色々な切り口が考えられるので、どの切り口で区分をするか。あるいはマトリクスで進めるかを検討します。区分の例としては、階層別(新人/中堅/マネージャ)、職務階層(担当者/リーダー/事業部長/役員)、技術階層(デジタル入門/デジタル活用/デジタルプロフェッショナル)などが考えられます。

テーマ案2:DX人財の採用、組織・環境づくり

・ポイントは現場DXが実践出来る組織が重要であるという考え方のもとで検討します。ある企業は人作りから組織作りに言葉を変えたと言われています。つまり人財育成しても人財を活かす組織が出来てないとまわらないという意味です。組織と人財育成をセットで考えます。また育った人財が活躍できる環境(組織/処遇)整備についても検討します。